本塩沢

出典:http://kougeihin.jp/item/0114/

「本塩沢」の「塩沢」は、新潟県南魚沼市塩沢の塩沢です。本塩沢は、魚沼市塩沢で織られている絹織物です。

米所・魚沼の織物の歴史

日本で有数の米所新潟県南魚沼郡では、お米・お酒がとても長い歴史をもち、今でも美味しさを誇っていますが、じつは織物が昔からとても盛んでした。その歴史はなんと1200年前の奈良時代までさかのぼって、正倉院に塩沢地方の織物が保存されています。

でも、その時に織られていたのは、絹ではなく「麻」。塩沢で奈良時代から、大正時代の初期までは麻を使った織物が名産だったのです。理由の一つとして、塩沢といえば豪雪地帯。雪解け水がコシヒカリと日本酒にかかかせないように、織り上がったあとの着物の布を仕上げるためにも「湯」でもむことと、雪に晒すこと不可欠。温泉も雪も、冬に時間が長く取れることも織物には好条件だったのです。

しかし時代がどんどん近代化を進め、麻織物の需要は減っていく一方でした。そのとき、この伝統の麻織物の技術を、麻ではなく「絹」を使って上等の布に生かせないかということで生まれたのが「本塩沢」の前身というか通称という「塩沢お召」というわけです。

お召とは

昔話や童話のなかに、「お召し物」という言葉が出てきます。偉い人の服というイメージが湧きませんか?その通り、将軍のごひいきの着物だったことからこの名前が付きました。

「お召」というのは、先に色を染めた糸を平織りで織った縮緬(ちりめん)の一種で、なんと江戸幕府第11代将軍徳川家斉が好んだので「御召」と呼ばれるようになりました。

主に和服に用いられる絹織物の一種で、最高級の素材として、略礼装・洒落着に好まれます。もちろん経済産業省指定伝統的工芸品。

ということは、「塩沢お召」というのは、将軍が着ていたような上等な織物で、縮緬のあのデコボコ感がある、絹織物だったということがイメージ出来るでしょう。

平織り・縮緬について

ついでに「平織り」「縮緬」について、ちょっと雑学の寄り道をしましょう。

平織り(ひらおり)とは、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交互に浮き沈みさせて織る、最も単純な織物。できあがった模様は左右対称で、丈夫で摩擦に強く、織り方も簡単なため、広く応用されている織り方です。

縮緬(ちりめん)とは、本来は、横糸に撚りをかけたものを用いて織ることで、布にデコボコ(「しぼ」と言います)が生まれる布のこと。糸の組み合わせ方や織り方でたくさんの縮緬の種類があります。

「お召」の縮緬では、平織りの糸を、縦糸につよい撚りをかけた八丁撚りという糸、横糸に一般の縮緬よりも撚りのつよい御召緯という糸を使っているので、縮緬独自の「しぼ」がより大きく、はっきりとあらわれるところに特色があります。この「しぼ」が肌と布との間を絶妙に保ち、サラッとしたさわやかな着心地になります。

現代の「本塩沢」ではたて糸とよこ糸は甘撚りの「生糸」を、更によこ糸には生糸の強撚糸「地緯糸(ジヌキイト)」を使用しています。

親しまれる通称「塩沢お召」から「本塩沢」という伝統工芸品へ

お召がどんなものかがわかったところで、話を「本塩沢」に戻しましょう。

大正中期に生まれた「塩沢お召」は、「お召」の作り方をした「塩沢織物」という通称だということで、「本塩沢」という名前を付けられました。他にも塩沢織には種類があるので、区別が必要だからです。そして、1976年(昭和51年)に経済産業大臣指定伝統工芸品に指定されました。

それでは「本塩沢」の特徴をまとめておきましょう。

・原材料・糸は、生糸(絹織物ですもんね)

・細かい絣模様を織りだし、お召地風縮緬で、「しぼ」があるのでサラサラ感あり

・経済産業大臣指定伝統工芸品

新しい名前が出てきましたが、「絣模様」というのが大きな特徴です。

布を織る糸を染めるときに「絣糸(かすりいと)」といって、まだら模様に糸を染め、その配色によって、亀甲や十字の模様を織ることです。とても細かな模様となっています。

塩沢織あれこれ

最後に「本塩沢」以外にも、塩沢には歴史のある織物がたくさんあります。

「本塩沢」と間違えられてばかりいる【塩沢紬】からご紹介しましょう。

大正時代に生まれた「本塩沢」は縦も緯も糸は生糸(絹)ですが、それより以前、江戸時代の明和年間(西暦1764年~71年)の頃には、縦糸には生糸、緯糸に真綿糸を使用した「塩沢紬」が創られました。ご当地塩沢では、この「塩沢紬」のほうが親近感があるようで、南魚沼には「塩沢つむぎ会館」という文化施設があります。そこには塩沢織のさまざまな歴史や布が展示されています。もちろん「本塩沢」もありますよ。

もうひとつ。【夏塩沢】という名前で呼ばれるものがあります。

明治時代になり、「本塩沢」のように縦糸にも緯糸にも生糸を使った絹織物を、夏物として改良して生まれたものが「夏塩沢」です。縮緬のしゃりしゃりした質感が夏の暑さに疲れる肌にとても気持ちよく、軽く感じます。