古き良き城下町・名水・郡上おどりなどで有名な岐阜県郡上八幡。この地で生まれた郡上紬はとても素朴で何とも言えない味わいがある着物です。ご存知でしょうか?今回は東海地方で作られている紬織物の一つ「郡上紬」をご紹介していきます。地域性を感じる着物ですね。

郡上紬の買取相場

郡上紬の買取相場ですが、オークションサイトの直近5ヶ月の落札価格で確認してみると、46,800円程度です。

もちろん物によって価格が変わってくると思いますが、目安にはなりそうです。

郡上紬とは?

郡上紬

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郡上紬とは、岐阜県郡上八幡町で織られている紬織物のことです。「郡上紬」という名称は第2次世界大戦後に付けられたそうなので、郡上紬として定着してから比較的新しい着物と考えてよいでしょう。落ち着いた色合いと素朴な雰囲気を醸し出す着物です。微妙な色のグラデーションや縞・格子柄・幾何学模様・無地など、いつまでも飽きの来ないデザインが特徴です。この着物の魅力が世間に広まるようになったのは、郡上紬を愛した白洲正子氏が著書の中で触れたことが大きいようです。

 

広められた手紡ぎ・草木染の郡上紬。その扱いとしては小紋と同じく、普段着として愛用される着物です。訪問着よりも格下になるので、フォーマルな場へは着用できません。郡上紬は大量生産をあえて避けて、すべて手作業で製作されています。しかし、今では残された数人の職人さんたちの手により、丁寧に受け継がれています。このようなことから、郡上紬を「幻の紬」とよぶこともあります。

郡上紬の歴史と変遷

郡上紬

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もともとは郡上の地にやってきた平家の落武者たちが野生の蚕糸を使用して、宮廷の優雅な感覚を頼りに織り始めたことが郡上紬のはじまりでした。この時代の人々は普段着を織る感覚で作っていたようです。当時は、このように「地織り」と言って、くずの繭をためておいて紡いだものを手織りで作った自家用織物がたくさん出回っていたと言われています。

 

しかし、その後江戸時代から昭和にかけて、郡上紬は存続が危ぶまれてしまうほど、どんどん衰退していきました。そんな存続の危機を救い、郡上紬を再生したのが宗廣力三氏(1914-1989)。古きよき時代の「地織り」を見事に復活させました。紬織物を郡上八幡の地場産業にしようと試み、いつの時代にも通用するものを作るという志を持って取り組んでいきました。まず工夫したことは紬の質の改良。インドのアッサムやベンガル地方が原産であるエリ蚕(えりさん)を飼育し、自ら糸を紡ぎ様々な織りを実験的に試していったと言われています。その中で開発したのが独特な草木染である「どぼんこ染」。これが郡上紬の何とも言えない素朴さが感じられる所以です。その他、宗廣氏が開発した「初音絣(はつねがすり)」「紬縞織(つむぎしまおり)」「絣織(かすりおり)」なども高い評価を受けています。なかでも、1982年には紬縞織と絣織の類まれない素晴らしさが賞賛を受け、国の重要無形文化財技術保持者(人間国宝)に認定されました。郡上紬は人間国宝を生み出した紬織物なのです。

郡上紬の特徴

郡上紬

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それでは、次に郡上紬の特徴をお伝えしていきます。

 

郡上紬の特徴の一つは素朴な色合いと光沢です。中でも有名な染め方として「どぼんこ染め」というものがあります。染色液の中に糸を垂直に入れた後に、糸の繊維が自然に色を吸い上げる力をうまく利用した方法です。

 

また、郡上紬に使われる糸は春蚕(はるご)からのみ作られた糸です。春繭から本真綿を手で紡ぎ、それらを天然草木染によって染め上げたもの。染料についてですが、赤色は茜(あかね)、黄色は苅安(かりやす)、黒色は阿仙薬(あせんやく)など郡上の地に生育している植物を使用している点が特徴的です。時間をかけて何十回も繰り返し染めるので、郡上紬は簡単に色落ちしたりしません。着れば着るほど、深みやつやが出てくるのも納得です。

 

そして、織りには郡上紬の独特さを感じさせる縞織りと絣織りを繰り返して仕上げていくのがポイントです。経糸(たていと)には節糸の玉繭を、緯糸(よこいと)には春繭からとった本木綿の手紡ぎ糸が使われます。そして、高機(たかはた)を使って、繊細な感覚を大切にしながら手織りで丁寧に織られるところが個性豊かな反物ができる理由です。

 

郡上紬は羽織ったときに、とてもふわりとしていて温かいという点も特徴の一つ。まるで真綿をまとっているかのような温かさで、着心地もとてもよいです。

まとめ

今回は郡上紬についてご紹介させていただきました。いかがでしたでしょうか?希少な郡上紬の個性豊かな魅力を十分に感じていただけたことと思います。このような地域に根差す伝統技術としてその要素を着物や小物を通じて、時代とともに受け継がれていくことはとても素晴らしいことです。