絞り

出典:https://magazine.furisode-ichikura.jp/is-status-of-shibori-furisode-is-low/

 

「絞り」は、古来より世界各国で発達してきた染色技術です。基本はシンプルで、布の一部を糸やその他の方法でくくったり、絞ったりした後に染色し、防染めされた箇所だけ柄として残すというもの。手間暇が掛りますが、その柄は世界で一つ、決して同じものは出来ないという魅力があります。

そんな人々を魅了して止まない「絞り」をご紹介いたしましょう。

「絞り」の歴史

日本では、奈良時代にはすでに「絞り」で模様染めをすることがあったようです。それは奈良時代の様々な貴重品が所蔵されている正倉院に、絞りの技法を使った正倉院裂(ぎれ)があることからも分かります。

そして室町時代から桃山時代にかけて、さらに技術は発展し、幻の「辻が花染め」も生まれました。江戸時代に入ると「友禅染め」が出現して、「絞り」は京友禅の一部に模様として取り入れられることも増えました。また同時代には岩手や秋田の「南部絞り」や「有松・鳴海絞り」も確立され、現代に至っています。

あこがれの「辻が花」、その魅力

室町時代に花開き、江戸初期でその姿を消したと言われる幻の絞り染めが「辻が花」です。当初は「縫い絞り」の他、現在では使われる事の無い「竹皮絞り」で様々な模様を作っていたものが、次第に摺り箔や刺繍も加えられ、豪華になっていったと言われています。

「辻が花」の名前の由来は定かではなく「染色にツツジの花を使い、それが訛って辻が花となった」「辻という花文から取った名称」「木辻(奈良県)に専門の職人がいた」など言われていますが、正確なところは分かりません。豊臣秀吉や上杉謙信、徳川家康など高名な武将が着用した「胴服(どうふく)」と呼ばれる羽織等に、辻が花が施されているので、その技法を読み取ることは出来ます。しかしながら文献による資料は少ないので細かいことは分からないと言っても良いでしょう。

「辻が花」は手間が掛るために、糊を使って染色する「友禅染め」が発展するにしたがって、その姿を消し、幻と言われるようになりました。一時は完全に無くなってしまった「辻が花」ですが、故・小倉建亮氏や故・久保田一竹氏らによって復元され、現在では「格調高いあこがれの辻が花」ということで人気を集めています。

豪華な「鹿の子絞り」とは?

絞りの中で最も繊細と言われる「鹿の子絞り」は、京都周辺で作られる「京絞り」の一つで「京鹿の子」とも言われます。京絞りの中には、他にも「傘巻き絞り」や「帽子絞り」「桶絞り」などありますが、子鹿の背中にある斑点に似ていると言われる「鹿の子」が一番ポピュラーでしょう。

四角形の絞り目を斜めに揃えて、指先の感覚だけで布一面びっしりと括る技術は職人技とも言われ、高級品となっています。他の模造品と区別するためにも、手作業の象徴である凹凸を残すことがポイントで、保管が難しく注意が必要なのです。

一口に「鹿の子絞り」と言っても、括り方で「本疋田」「中疋田」「ばら疋田」などに区別されます。

南部藩が支えた文化「南部絞り」

「南部」と言えば「南部せんべい」や「南部鉄器」といった地場産業が有名です。これは現在の岩手県と秋田県の一部地域のことで、江戸時代に南部藩が治めていて、その時代に様々な文化が花開いたと言われています。

「南部絞り」もその一つ。この地方は紫根や茜草の産地としても有名で、これらを使って紫や朱色の染め物が作られました。「南部絞り」は、この染め物に縫い絞りで模様を施したものですが、幕府や朝廷への献上品として大きな役割を果たしていたと言われています。

明治維新後には一度姿を消しましたが、大正5年、藤田謙氏が再興し、伝統工芸品として知られるようになりました。

その昔は「大マス」「小マス」「立湧」「花輪」といった4種類の柄だけでしたが、技術の進歩で、絞りのムラを活かした多くの模様ができ、人気を集めています。

木綿絞りと言ったら「有松・鳴海絞り」

約380年の歴史を誇るのが、名古屋市にある「有松・鳴海絞り」です。江戸時代、この地域は農業に適していなかったために、開拓に入った竹田庄九郎が絞り染めを奨励したのが始まりと言われています。最初は藍染木綿絞りの手ぬぐいや手綱を有松で旅人に売っていたものでしたが、東海道五十三次の宿駅・鳴海宿に出張販売するようになり、大流行となりました。元禄時代には浴衣なども出来て、土産物として売られていた様子は浮世絵にも描かれています。

尾張徳川藩の庇護のもと発展してきた「有松・鳴海絞り」は、シンプルな技法ながらも多種多様の柄を生み出し、世界にもまれにみる作品を作り上げたと言われています。現代では木綿だけでなく絹絞りなども扱い、独特な風合いで発展しつづけているのが「有松・鳴海絞り」なのです。

まとめ

着物はクリーニングが難しいと言われています。正絹などは素人が水で拭いただけでもワジミが出来てしまうほど繊細なものなのです。

特に「絞り」は、扱いに慣れてないクリーニング店に出すと、絞りが伸びてせっかくの立体感が無くなってしまう場合があります。一度凹凸が無くなると再現することはできませんから、注意しましょう。和服専門クリーニング店にお願いすることをおすすめします。