全国的に見ても、紬の織物には様々な種類があります。なかでも信州にはたくさんの代表するべき紬(総称して信州紬)があり、その中の一つである長野県の伊那地方で製作されている紬織物のことを「伊那紬」とよびます。この伊那紬をご存知でしょうか?今回は伊那紬に焦点をあてて、その魅力や特徴をご紹介していきたいと思います。

伊那紬の買取相場

伊那紬の買取相場をオークションサイトで確認してみました。ここ数ヶ月の平均でみますと、6,000円程度です。

伊那紬の生地を使用した草履の取引も多く見受けられます。買取業者を利用する際に参考にするとよいでしょう。

伊那紬とは

伊那紬

出典:http://www.ikumiya.com/shop/products/detail.php?product_id=378

 

もともと長野県は「蚕の国」とよばれるほど養蚕業が盛んな地域で、伊那地方もその一つ。この地域で紬織物は古くから受け継がれている産業の一つです。

とくに、中央アルプスと南アルプスの間に挟まれた伊那地方の天竜川沿いで作られる織物のことを「伊那紬(いなつむぎ)」とよびます。特徴の一つとしては伊那紬をつくる工房がその昔は約120も存在していたのにもかかわらず、現在では一つの工房しか残されていないということです。

それが駒ケ根市にある久保田織染工業。こちらで唯一生産されている伊那紬が今もなお、古くから伝わる伝統芸能として受け継がれています。

また、1975年には経済産業省から伊那紬を含めた信州紬が伝統工芸品として認定されていることからも、今日に至るまでその希少な伝統技術が守られているのでしょう。大島紬・結城紬などと並ぶ希少価値を誇る紬織物です。

 

ちなみに伝統工芸品であることの指定条件は以下の通り。

  • 先染めの平織りであること
  • 経糸(たていと)に使用する糸は生糸・玉糸・真綿の手つむぎ糸、緯糸(よこいと)に

使用する糸は玉糸・真綿の手つむぎ糸にすること

  • 緯糸の打ち込みに対しては手投杼を用いること
  • かすり糸の染色法は「手くくり」によること
  • 使用糸は生糸・玉糸・真綿の手つむぎ糸にすること

 

一般的に、伊那紬はおしゃれ着として着用される方が多い着物です。また、最近では着物としてだけではなく、ネクタイ・マフラー・ストールなどの小物にも多く活用されている点も見逃せないポイント。

伊那紬の歴史

その始まりは奈良時代に織られていた「あしぎぬ」に遡ると言われています。そして、江戸時代に入り、信州の様々な藩が養蚕業を奨励したことから、農家の方々が副業的に織物をはじめ、草木染めの技術も相まって徐々に産業として確立していきました。昭和時代に紬織物が脚光を浴び始めるのと同時に、伊那紬も注目されるようになり、今日に至ります。

伊那紬の特徴や製作工程

それでは伊那紬の特徴について、ご紹介します。まず、糸繰りという作業によって、かせの状態で届けられた糸をボビンに巻き付けていきます。その後に控えているのが、重要な糸づくりの過程。この段階で生糸・玉糸・真綿の手つむぎ糸を織物の模様などに合わせて、撚糸(ねじること)していきます。この過程があることによって、ばらばらしていた糸がまとまりやすくなるという利点もあります。

出典:https://item.rakuten.co.jp/ohmiya/ina-1/

 

次に、染色。画像のような渋い光沢と格調の高い染めが伊那紬の大きな特徴です。これは「草木染め」という工程によってなされる業。伊那地方で自生したやまざくら・りんご・矢車玉などの天然植物染料を使用して、染め上げていきます。もともとほとんどの植物は染料として使えるというくらいですから、伊那地方の植物や樹木から色素を煮だして、繊維として染めていくことによって、この素朴で美しい発色が実現するのです。ちなみに、1㎏の糸を染めるのに、およそ1㎏の染材が必要と言われています。

 

そして、染め上げた生糸・玉糸・真綿の手つむぎ糸などを使って、高機(たかはた)で一本一本丹精込めて織っていく作品は、まさに一点ものの着物づくりに匹敵します。草木染めで染め上げた糸は違った色同士でもけんかすることなく、うまく調和するのも魅力。特別感のある一枚が出来上がります。

 

とくに、伊那紬では経糸(たていと)と緯糸(よこいと)が異なる点が特徴です。経糸には生糸・緯糸には真綿の手つむぎ糸が主に使用されますが、その感触は緯糸の方がしっとりとして真綿の温かみや柔らかさを感じられます。この織り方のおかげでしなやかで強く、丈夫な織物に仕上がります。

 

また、伊那紬の柄は縞や格子柄が多いのが特徴。草木染めは同じ発色が二度とないと言われるほど、その時々の繊細な作業が作品に反映されやすいので、熟練した女性の職人さんによる非常に緻密な作業になります。

伊那紬

出典:https://item.rakuten.co.jp/auc-sawarabi/10006124/

 

まとめ

今回は信州の自然が産んだ伊那紬についてご紹介させていただきました。いかがでしたでしょうか?伊那地方で育った自然を生かして製作されている点が素朴さや懐かしさを感じる所以かもしれません。このように、やまざくらなどの天然染料を使用した草木染めの着物は、今まで長年にわたって愛され続けてきたように、これからも伝統工芸品として代々、受け継がれていくことを願わずにはいられません。